Story【こだわり】

「靴下はどれを選んでも、履き心地はたいして変わらない。」

シャツやセーターには多種多様な着心地があり、時には感激するほどの肌触りに出会うのに、靴下に対して同じような経験を持つ人は少ないのではないだろうか。

その原因の一つに、靴下に使用される「糸」がある。
湿気の多い日本において、紳士靴下の素材は通気性と吸湿性の高い綿が良いとされているため、高級品でもその多くは綿素材のバリエーションで作られる。また一部の高級品を除いては、市場の商品価格を大きく逸脱しないよう、糸の選択肢はある程度限られている。

idé hommeでの糸探しは、もっと自由に靴下を作りたいと思うところから始まった。
普段の足もとを綺麗に魅せる「シルバーライン」では、高級でありながら手入れが簡単で、優れた機能と美しさを兼ね備えた糸を選んだ。

優れた機能と美しさを兼ね備えた糸一方、「ゴールドライン」では、理想の靴下に求める要素をリストアップし、それを叶える糸を世界中から探した。
例えば<IG-701>開発のきっかけは、イタリアで魅了されたカシミア靴下。
帰国後、すぐに国内で同様の糸探しを始めるも、強く撚りをかけた細いピュアカシミアはなかなか見つからない。さすがに無理かと諦めかけた頃、ようやくある販売会社を介して、海外から取り寄せることに成功した。糸の作り手は、こんな高級糸が靴下に採用されるのは初めてだと驚いたが、仕上がりはあのイタリア製にも劣らない満足のいくものとなった。
運命の出会いとも思えるこの糸は、期待を大きく上回る品質だった。それまで持っていたカシミアのイメージは、洗濯機で洗うと風合いを損なう、毛玉ができやすく、切れやすいというもの。ところが<IG-701>は、洗濯機で洗うと更に柔らかさが増し、艶があって毛玉ができにくく、丁寧に履けば簡単に穴があくことはなかった。すぐに、このカシミア糸はブランドの軸となった。

靴下の常識を覆し、二つの優れた天然素材を組み合わせてつくる唯一無二(無双)の靴下<IG-701>の糸が手に入ったことで、次は前々から夢に描いていた、カシミアの肌触りと綿の強さを併せ持つ靴下への挑戦が始まった。
表と裏に、二つの天然素材を組み合わせて一枚の靴下を編む為には、どちらも細く強くなければ美しく仕上がらない。そこで、様々な糸を試した結果、シルクのようなしなやかさと強さを持つ最高級の新疆超長綿が最適とわかり、採用を決めた。カシミア原毛の生産地と同じ中国の新疆が故郷だったことも、我々にとっては決め手となった。
こうして出来上がった<IG-801>は、「靴下の常識を覆し、二つの優れた天然素材を組み合わせてつくる唯一無二(無双)の靴下」という意味を込めて、「結双-MUSOU-(商標登録申請中)」と名付けられた。